プラチナ_燃料電池自動車に使われる触媒 / Platinum_a catalyst used in fuel cell vehicles
本日はプラチナと燃料電池自動車の関係について書きます。
燃料電池自動車が普及するとプラチナの需要が増加することが期待されます。
バラード社のNicolas Pocard氏は以下のように述べています。
(バラード社はプラチナを触媒とする燃料電池用プロトン交換膜の開発を推し進めてきた世界的メーカーです)
「燃料電池自動車の高い耐久性と効率は新たな車両の選択肢となる上で重要で、プラチナはその耐久性と性能を維持することができる唯一の触媒。
プラチナに変わるものを見つけられないとは言えないが、今のところプラチナに変わる触媒はない。」
引用 【WPICレポート】プラチナ豆知識「燃料電池大手バラード社」(2020/05/13) – 一般社団法人日本貴金属マーケット協会(JBMA)
1. プラチナは燃料電池の触媒に使われている
プラチナは下図赤線枠内の燃料電池 (FC) スタック内の触媒に使われています。
引用 トヨタ MIRAI | 特長 | トヨタ自動車WEBサイト
燃料電池自動車が走る仕組み
STEP1 : 酸素 (空気) と高圧水素タンクの水素を燃料電池 (FC) スタックに送り込みます
STEP2 : 酸素と水素の化学反応により発電し、電気、そして水が生まれます
STEP3 : モーターに送電して走ります
発生した水は社外に排出されます。
2. なぜ燃料電池の触媒にプラチナが使われているのか?
結論を先に述べると、プラチナが酸素還元活性と耐酸性の両方の性質を満たしているからです。
段階を踏んで書きます。
燃料電池 (FC) スタックはセルが多数積み重ねられて構成されています。
右記サイトの図を基に作成 燃料電池(FC)とは - 水素・燃料電池実証プロジェクト -JHFC
セルは下図のように発電を行う最小単位のことであり、プラチナは触媒層に使われています。
右記サイトの図を基に作成 燃料電池(FC)とは - 水素・燃料電池実証プロジェクト -JHFC
発電の仕組み
1. 水素タンクから供給された水素 (H2) が、燃料極で2個の電子 (e-) を放出して水素イオン (H+) になります。
2. 水素から放出された電子は、外部回路を通って反対側の空気極に向かって電流として流れて、電力が発生します。
3. 空気極では空気中から取り入れられた酸素分子 (O2) が、外部回路から流れてきた電子を受け取り、酸素イオン (O2-) になります。
4. 酸素イオンは、電解質膜を伝って移動してきた水素イオン (2H+) と結合して、水 (H2O) になります。
触媒は3.の空気極の酸素還元反応 (1/2O2 (0価) → O2- (-2価)) 速度を大きくしており、ここで高い酸素還元活性が求められています。
また、燃料極の反応速度も大きくしており、発生するH+の濃度が高くなり強酸となるので、高い耐酸性も求められています。
以上の条件に最適な金属触媒がプラチナなのです。
周期表でプラチナの近く (性質が近い) の金属を考えた場合、
パラジウムは酸素還元活性は高いですが、耐酸性が不十分です。
金 (Au) やイリジウム (Ir) は耐酸性はありますが、酸素還元活性が低いです。
3. プラチナの使用量を減らす動きも
燃料電池のセルの中でもとくに高価な部品が触媒であり、その理由はプラチナを使っているからです。
プラチナの使用量を極限まで減らす方法として、カーボンの粒にプラチナの微粒子を付けたプラチナ担持カーボンが触媒として使われています。
また、高活性化技術の方法として、プラチナと他金属の合金化技術の開発も進められています。
しかし、コストや触媒性能、化学的な安定性の観点からプラチナが理想的なのです。
Nicolas Pocard氏も
「長期的にはプラチナの使用量は減少していくだろうが、差が出るほどの減量は考えられない」
と述べています。
引用 【WPICレポート】プラチナ豆知識「燃料電池大手バラード社」(2020/05/13) – 一般社団法人日本貴金属マーケット協会(JBMA)
4.最後に
燃料電池の触媒として最もプラチナが最適であると述べてきました。
本日の記事は各サイトと趣味で買っていた以下の書籍を参考にしました。
↓燃料電池自動車の仕組みが書かれています。また、電気自動車やハイブリッド自動車の仕組みについても書かれており、比較されている本です。
↓自動車よりも燃料電池に特化しています。様々な燃料電池や触媒についても上の本より詳しく書かれている本です。
プラチナに興味ある方は以下の記事もぜひご参照下さい。
VS 金
VS パラジウム
ETFについて
本日は以上です。少しでも参考になればと思います。
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