リン鉱石は枯渇する?価格推移と投資についても調査
本日はリン鉱石について書きます。
I will write this article in English at a later date.
リン鉱石とはWikiに以下のように書かれています。ちなみに金属ではないです。
工業原料として利用可能なリンを採取できる、リン酸塩鉱物を主成分とした鉱石である。
ネットではリン鉱石の枯渇や高騰といった記事が散見されます。
これに対して興味を持ったので、投資対象となりうるかも含めて、枯渇すると囁かれる理由や価格予測、リン鉱石関連銘柄について調査しました。
1. リン鉱石は枯渇する?
1-1. リンの循環が危機
人間活動による地球システムへの影響を客観的に評価する方法の一例として、地球の限界 (プラネタリー・バウンダリー) という研究があるようです。
人間の活動が地球の許容できる境界を越えることがあれば、自然資源に対して回復不可能な変化が引き起こされるとされています。
地球の限界 (プラネタリー・バウンダリー)
リンの循環は赤い領域、つまり高リスクの領域にあります。
引用 環境省_平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第1章第1節 持続可能な社会に向けたパラダイムシフト
1-2. 枯渇すると言われる理由
需要&供給のグラフが見つからなかったため、別の切り口で書いていきます。
大阪大学の大竹氏は以下のような「資源ピラミッド」という概念を提唱し、リン資源の有限性に警鐘を鳴らしています。
リンの資源ピラミッド
・ピラミッドの頂点には、品質が最も良く採掘コストが最も低いリン鉱石が位置する。
・ピラミッドの頂点から下に向かうと、リン鉱石の品質は低下するが、逆に採掘コストは増えるため、リン鉱石の販売価格は上昇する。
・現在の技術レベルで採掘して採算が取れるリン鉱石の埋蔵量を「経済埋蔵量」と呼ぶ。
・一方、現在の技術で採掘しても採算がとれないリン鉱石の埋蔵量を「潜在埋蔵量」と呼び、今後よほどの技術革新でもなければ、掘り出されることはないだろう。
しかし、この大竹の記述後、リン鉱石の埋蔵量について、アメリカ地質調査所や国際肥料開発センターによって大幅な見直しが行われた。
リン鉱石の経済埋蔵量が大幅に増加する方向で見直されたため、「現在の経済条件で開発可能な埋蔵量は60~130年で枯渇することはなく、300~400年間はリン酸肥料の製造が可能である」) とみられている。
引用 4.リン資源と肥料 | 農業におけるリン循環の視角から循環型社会を展望する ―大串 和紀 | Seneca 21st
数百年は枯渇の危惧はないようですが、資源の有限性の考え方に非常に参考になる図です。
大竹氏は以下のようにも述べています。
わたしたちが農業や工業で使っているリンのほぼすべては、地下資源であるリン鉱石から得ている。
自然界でリン鉱石ができるまでには、数千万年もの長い年月が必要だ。
もし人間がリン鉱石を採掘し、利用した後で海に流し続ければ、やがて枯渇してしまう。
引用 気候変動より深刻?危機的なリン問題 | リコー経済社会研究所 | リコーグループ 企業・IR | リコー
1-3. 何に使われているのか
いつも通り需要の円グラフを掲載したかったのですが、ネット上で良い資料が見つからなかったので、代表的な用途を箇条書きにします。
・肥料
・セメント、石膏ボード
・繊維加工、栄養剤、食品添加剤
・医薬、農薬、脱水剤、油脂、メッキ
・殺虫剤、除草剤、可塑剤
・マッチ
・食品 (ベーキングパウダー)、飼料、窯業、歯磨き
・家庭用合成洗剤、清缶剤
など
リン鉱石を原料として、様々な中間原料・中間製品を経由し、上記のような最終用途となります。
参考 https://www.nirs.qst.go.jp/db/anzendb/NORMDB/PDF/52.pdf
上記以外では自動車用リチウムイオン電池の正極活物質に使われています。
従来の正極活物質にはNCM系 (ニッケル、コバルト、マンガン) やNCA系 (ニッケル、コバルト、アルミニウム) などの材料が使われることが多かったのですが、
昨今の中国の安い電気自動車にはリン酸鉄リチウム (LiFePO4) が使われることが多いです。
農薬、化学肥料などの川下産業の伝統的リン鉱石需要が維持されると同時に、新エネルギー車の爆発的な増加により、大量のリン酸鉄リチウムの需要が高まっている。
引用 中国:リン鉱石価格の高騰が継続|JOGMEC金属資源情報
2. リン鉱石の価格予測
Statistaというサイトで予測グラフが掲載されていました。
※得てしてこのような価格予測は外れますので、あくまで参考です。
引用 • Phosphate rock price forecast 2015-2035 | Statista
上のグラフを見ると、価格は2022年にピークをつけ、2024年にかけて下落することが予測されています。
2024年に底をつけた後、2035年にかけて上昇することが予測されています。
リンは肥料としての安定した需要と、今後のリチウムイオン電池への需要が高まることが予測されているため、このような価格予測になるのは納得がいきます。
3. リン鉱石への投資手段
さて、リン鉱石に投資をしたいと思った際に何に投資すれば良いか迷うと思います。
ざっと探したところ、リン鉱石のETFや先物は見つかりませんでした。
そのため、投資手段はリン鉱石採掘会社の株に限られると思います。
PHOSPHATE Investing News ( Phosphate Stocks to Watch (Updated 2022) ) に時価総額1000万米ドル以上のリン鉱石の採掘会社が掲載されていましたので、以下に記載します。
アルファベット順です。
Arianne Phosphate (TSXV:DAN) (カナダ)
→ 燃料電池セルやリチウムイオン電池のようなエネルギーセクターへ高品質材料を提供しています。
Avenira (ASX:AEV) (オーストラリア)
→ リン酸鉄正極市場や肥料市場に材料を提供しています。
Centrex Metals (ASX:CXM) (オーストラリア)
Chatham Rock Phosphate (TSXV:NZP) (カナダ)
Fertoz (ASX:FTZ) (オーストラリア)
Itafos (TSXV:IFOS) (カナダ)
→ この中で最も時価総額が高いです。
Minbos Resources (ASX:MNB) (オーストラリア)
Nutrien (TSX:NTR,NYSE:NTR) (カナダ)
Vale (NYSE:VALE) (ブラジル)
カッコ内は本社のある国を記載していますが、採掘場所は他国にもあることにご注意下さい。
日本はリン鉱石の100%を輸入に依存しており、どこかの商社が取り扱っているかもしれませんが、そこまで調査できていません。
4. 所感
個人的には「2. リン鉱石の価格予測」を見たところ、2024年頃にリン鉱石を投資対象にしても良いのではないかと思います。
今のような変動の激しい相場で焦って買う必要はないと思います。
※投資は自己責任でお願いします。
本日は以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。
以下のような記事もありますので、よろしければご参考下さい。
owngoalkun-credentials.hatenablog.com
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